Copyright © VOYAGE GROUP, Inc. All Rights Reserved.

フライドチキンを描くし!ただし画伯が伊藤若冲を目指すようです

フライドチキンを描くし! 伊藤若冲や日本画,唐絵を交えながらわかりやすく解説

2016/04/28

中本二郎

2

伊藤若冲 日本画 唐絵 ホビー 画家 筋目描き 水墨画

  • facebook share
  • line
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • サトルの薦めで絵を描き始めたただし。

    最初はごきげんに絵手紙を描いてしましたが、どうやら雲行きが怪しくなってきました。

  • お絵かきは楽しいしー。 働くのは無理だけど、こうして絵を描いてるのは苦にならないし。

  • だいぶうまくなったじゃねえか。 こないだ絵手紙教えてやってよかったよ。

  • もう絵手紙だけじゃ物足りなくてこうして作品を作りまくりなんだしー。 そろそろイラストレーターとしてオファーがありそうだし!

  • そっか…。 あるといいな。

  • とにかく心の赴くままに絵筆を躍らせることだし! 誰も僕を止められないんだし! メシ食う暇もないんだし! ムシャムシャ

  • 言いながらフライドチキン食ってるじゃねえか。 しかも俺のおごりで。

  • ああ、忘れてたし。 無意識で食べてたんだし。

  • そんなんだからブクブク太るんだよ。 運動もしないでバカバカ食って。

  • 仕方ないんだし! 創作のためだし! チキンさんには申し訳ないけど天才の栄養になってもらうし!

  • で、いまどんな絵描いてんだよ?

  • の子だし! 野菜とか花とか描き尽くしたんだし!

  • 描き尽くしたのか…? 絵っていうのは、ちゃんと洞察して描けばひとつの野菜でもいくらでも深掘りできるぞ。

  • んー、かわいい女の子のほうが気力がムラムラ湧いてくるんだし。 野菜を上手に描けても食べれないけど、かわいい女の子描けたらいろいろ使えて一石二鳥なんだし!

  • 何に使うんだよ…。 絵をなめすぎだろ。 そんな想像上の女の子だけじゃなくて、野菜ひとつとっても、本物を前にして描けばいろんな描き方があるだろが。

  • そんなモチーフがないんだし。

  • モチーフなんていくらでもあるだろう。

  • ん? サトルを描いてほしいんだし? うーん…。

  • うーんじゃねえよ、腹立つな。 机の上の文房具とか、このフライドチキンとか。

  • えー… フライドチキン描いても食べれないし?

  • フライドチキンじゃないけど、鶏の絵で歴史的に残った画家がいるぞ。

  • えー、ニワトリさんだし? からあげクンみたいな感じだし?

  • あんなのじゃねえよ。 もっと写実的な日本画だ。

  • なんて人だし?

  • 伊藤若冲だ。

    江戸時代、1716年、錦小路の青物問屋の長男として生まれた人だ。 正確には、当時流行していた「唐絵」と呼ばれる中画だな。

  • 昔の人だしー。 昔のニワトリのゆるキャラみたいの描いてたんだし?

  • いや、ぜんぜんゆるくはないな。 この時代の技術の粋を集めた作品を残している。

  • ほうほう、どんな感じだし?

  • これだ。

  • おおぅ… これはものすごいし…。 生きてるみたいだし…!

  • これは、若冲の晩年の代表作、「動植綵絵郡鶏図」だ。 42歳ごろから描き始めている。

  • なんかフライドチキン食べづらくなるし…。

  • 若冲は多くの動物や植物を描いているが、ニワトリが特に気に入っていたようで、「動植綵絵」シリーズ30点のうち、実に8点がニワトリがモチーフになっている。

  • ニワトリさんでこれだけ描けるんだし…。

  • 動植綵絵シリーズでは、この「動植綵絵 郡」も良い。

  • すごいし! お魚さんが泳いでるし。 真ん中のタコがインパクト抜群だし!

  • そうだな。 この大ダコの足にしがみついてる子ダコもかわいい。 描写力だけではなく、こういう遊び心も若冲の魅力だな。

  • 漫画みたいだし。 というかパチンコ海物語って感じだし。

  • 海物語はこんな緻密じゃないしまりんちゃんもいないだろ…。

  • いやー、若冲さんの描いたまりんちゃん見たいしー。 きっとすんげー美人なんだしー。

  • 若冲は女は描いてないぞ。 生涯独身だったんだ。

  • えー… ひょっとして。

  • それはわからんが。 もともと、家業は枡源という商家の長男だったが、商売にも熱心ではなく、芸事も、酒も、世間の雑事には全く興味がなかったという。

へー
へー
  • ストイックなんだし? それが絵から伝わってくるし。

  • …それに比べてお前の女の子の絵はなんだ…。 エロマンガを描こうとしてる割にヘタクソだし…。 人間はこんな関節の付き方してないぞ。

  • ほっといてくれし! それにしても、商家の長男なのに、商売に興味なかったら大変なんだし?

  • その通り。 家を継いで商人をやっていたが、二年も丹波の山奥に隠遁してしまう。

  • 現場はあのバカ息子が…!って感じなんだし!

  • その間、山師に財産が狙われて混乱をきたした、という説がある。

  • 無理もないし。

  • 若冲は当時は初老とされている40歳になった時点で、さっさと家督を弟に譲ってしまい、隠居する。そこから、さっきのような「動植綵絵」シリーズなどを描き始める。

  • 頑固じじいって感じだし。

  • まぁ、頑固じじいじゃないとこんな絵は描けないわな。 ほかにも、「動植綵絵 池辺群図」もかわいいぞ。

  • カエルのオーケストラだし! 鳥獣戯画みたいな感じだし。

  • 動物や植物も、洞察することでこれだけ生き生きと描くことができるんだ。 それに比べてお前のエロマンガ…

  • だからほっとけし!

  • 「動植綵絵 貝甲図」、これは色とりどりの貝が大集合だ。
    「動植綵絵 秋塘群雀図」これは雀。「百犬図」では、101匹わんちゃん大行進。

  • どれもかわいいんだし! なんかタッチに凄みがあるけど、全体的なモチーフはなんかゆるい感じなんだし。

  • それが若冲がいまだに人気を博している理由だろうな。 ちなみに、この百犬図は、死の直前、84歳での作品だ。

  • へえー…! ハンパないし。 これだけうまいんだから、師匠がいたんだし?

  • 当時の画壇は、室町幕府の御用絵師・狩野正信から続く狩野派が主流だった。

    若冲も最初は狩野派の門を叩くが、狩野派に学んでいる限りは自分の作風を築くことはできないと、独学で絵を研究したんだ。

  • やっぱり頑固ジジイなんだし。

  • 若冲の地元、京都の寺には唐絵が多く所蔵されていたから、自ら足を運んで勉強した。 そのうちに、修行僧のようになって、頭を丸めて肉食を避け、仏僧のようになっていった。

  • 商家の長男がそんなになったらたまったもんじゃないし。

  • 後を継いだ弟は、そんな兄に理解を示して経済的にも支えていたようだ。

  • 理解があるんだし…。 芸術家には理解あるパトロンが必要なんだし。 サトル、よろしくたのむし。

  • …お前が若冲クラスの売れっ子になったら考えてやるよ。

  • 若冲は、模写によって画力を磨く一方で、実物をじっくり観察することからしか真の姿を表現できないと悟るに至る。

  • 実物…。 やっぱり僕も実物の女の子を描かないといけないし…。 パトロンさん、よろしく頼むし。

  • 用意するかボケ。 若冲を見習え。

    自分でニワトリを数十羽も飼って、しかしすぐに描き始めずに、一年にわたってじっくり観察したんだ。

  • 一年も! すごいんだし。

  • そして、ニワトリに宿った「神気」を紙にしたためた。

  • うーん…。 命を吹き込んでるって感じだし。

  • こうしたカラフルな唐絵だけじゃなくて、墨一色の水墨画も多く残している。 筋目描きといって、墨の輪郭を書かずに、濃淡だけで表現する技法だ。 これは、かなりの集中力とスピードがないと描けない。

  • 洞察力とスピードとテクニック、すべて必要なんだし。

  • そういうことだ。お前にできるか?

  • うーん…ヘタでいい、ヘタがいいの絵手紙からハードル上がりすぎだし…。 とりあえず、このフライドチキンを観察するところから始めるし…。

    …。

    …。

    …。

    お腹減ってきたし…。 うまそうだし…。

  • …お前が若冲になるにはニワトリが人間に進化するようなもんだな。

  • おわり