第3話

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ただしが魔界転生して孔子になってしまったようです・シーズン2 第3話

孔子ってこんなやつだったし? 孔子や中国古典,論語を交えながらわかりやすく解説

2016/10/18

鉄道王太郎

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孔子 中国古典 論語 思想 古代思想 中国

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  • 前回までのあらすじ
    ただしは孔子に魔界転生し、サトルはその弟子となった。
    今回は論語の中でもっとも有名なフレーズを孔子は教えてくれるようです。
    二人の旅は続く……

    (今回の解釈も諸説のうちの一つです)

  • ちょっと旅って? その辺をふらふらポケモンGOがてら散歩してる、のまちがいじゃなくて?

  • サトルよ……

  • なんだい、ただし……じゃなくて、どうしました孔子先生!孔子先生!

  • 声がでかいなサトル。鄭声のごとしだし。

  • て、鄭声(ていせい)とは……?

  • 鄭と言うの音楽だし。わしはあれ、きらいだし!
    「鄭聲淫!佞人殆!」(鄭声は淫、佞人は殆うし)

  • み、みだらって事ですか!僕はみだらな奴ですか孔子先生!!
    気を付けます、以後気を付けます!!!

  • サトルもただしもいい加減になさいな。
    まだ孔子ごっこをやってるの?

  • ごっこではない。魔界転生じゃ……わしは魔界転生したんだし。

  • じゃあしょうがないわね。魔界転生じゃあしょうがないわ。

  • 今日もいろいろ、いろいろ教えてください孔子先生!
    学びたい……学んで学んで、最終的に石油王になりたい……。

  • だったら石油を掘りなさい。

  • ならば……
    「學而時習之不亦説乎」(学びて時に之を習う。また説(よろこば)しからずや)……だし

  • あーっ、ちょっとそれぇ!!

  • ボクをナメないでほしいなあ……。こう見えて僕は、文系の大卒出だよ?偏差値が55(国語だけ)の大学を出た大卒ですよ。
    そんなねぇ、「論語」の基本中のキホンみたいなのをもったいぶって言われてもねぇ。

  • サトル、あんた弟子なんじゃないの?いいのそんなナメた口きいて。

  • いいかい、コレ、『論語』の「学而第一」と言われる一節。一番最初の文章なんだ。

  • 論語の中でも最も有名な1節を、このボクが……偏差値が55(国語だけ)のボクが知らないとでもォ?知らないとでもォ?

  • ちなみに、どういう意味よ。

  • 「勉強してぇ、時間が経ったらぁ、復習するのがぁ、よろこばしいですねぇー」みたいな……。

  • こんな超・退・屈な教えなんかどうでもいいんだよ!
    なに?「復習が大事ですって」。お前は教師なの?近所の動きの遅いおじいさんなの?趣味は読書です、孫に会うのが楽しみです、静岡土産はいつも「うなぎパイ」ですぅーなの?

  • (静岡土産といえば……安倍川もちよ……!)

  • ボクが知りたいのは、そんな説教臭い言葉じゃなくて、ビジネスシーンでも使えるウィットにとんだ即戦力になる哲学的キーワードなの!

  • ライバルに差をつける知っててよかった豆知識を手軽にさくっと「なんとなく」わかりたいの!!説教臭い教科書返答なんて、この世界の誰もが求めていないの!!

  • では尋ねるし……。 わしの時代……春秋時代における「学ぶ」とは、いったい何を学んでいたと思うし?

  • えっ……それは……。 か、科挙?古代の中国ではテストで官僚を試験してたっていうそういう、だから、……過去問みたいな?

  • ぶっぶーだし! 科挙制度がはじまるのは隋の時代。およそ598年ぐらいから始まった制度だし。わしの時代から1000年も後の話だし。

  • てか、孔子ってそんな古い時代のヒトなのね。日本だとそのころ、土器に縄のマークつけて喜んでた時代になるのか。

  • じゃあ、じゃああなたの時代は、何を学んでいたのですか!!

  • 具体的には、「祭礼の作」が主じゃったし。

  • 祭礼の作法……?

  • 現代じゃあピンと来ないかもしれないが、当時は「政治をなす」とはつまり「神との交信」と近かったんだし。

  • 政治とは、神から神託を受けた「王」と呼ばれる特別な人間のみが行える、人々を導く法。それには、政治的なセレモニーをいかに知っているか、そしていかに人々に説得力を持ってセレモニーを行えるかがポイントだったのじゃ、だし。

  • なるほど。つまり当時の政治というのは……

  • お祭りを、いかにカッコよくやって、多くの人を従わせる方法というわけじゃしな。

  • 我々孔子一門は、当時では廃れかけていた周代(当時の正当王朝)の祭礼方法のエキスパートだったんだし。 ところが、時は下剋上の機運が中国全土に吹き荒れていたんだし……。

  • 誰も王の言う事は聞かず、カネと武力がモノを言う時代になってきたんだし。

  • だから当時の王族や貴族は、自分たちの政治に説得力を持たせるため、古代の儀礼や儀式を知っている専門知識人を厚遇したんだし。

  • へー。つまり、「学ぶ」っていうのの内容は、お祭りのやり方・進め方みたいなものだったのかしら。

  • 今でいうならば……オリンピックの開会式のような、歌あり、踊りあり、宣言文(詩の朗読)ありの「パフォーマンス演出」に近いといえるかもしれないんだし。

  • だから我々孔子一門は、読み書きのほかに「音楽」(楽器演奏)も必須項目だったんだし。

  • となると、先ほどの「學而時習之不亦説乎」は……

  • 「新しくパフォーマンスの振り付けや進行を学んで、くりかえし練習するのは楽しいね」ということになるし!

  • あっ、それならわかるかも!ダンスの振り付けを習って練習するのは楽しいし。

  • まった、この言葉には続きがあったはずだ。

  • 左様だし…… 「有朋自遠方來不亦樂乎」(友あり遠方より来る。また楽しからずや)

  • なるほど。つまり「練習してると、友達が遠くからやってきてくれてうれしい」と。

  • こう考えてもいい。「パフォーマンスの練習のために、スタッフや共演者になってくれる友たちが、わざわざ遠くから集まってきてくれる。こういうような人々との交わりも、また楽しいものだ」と。

  • なんだ。けっこうあるあるな話じゃない。

  • いままで「学ぶ」だの「復習する」だと思ってて、何が楽しいんだよって思ってたけど……こういう風に解釈すれば、「友あり遠方より来る」の意味がすっと入ってくるな。

  • 教科書に書いてある解釈だと、勉強してたら友達が来る理由が全然意味が分からなかった。

  • まだじゃし!この一説には、まだ続きがあるし!

  • ええっ?受験で出てくる時に使われるフレーズはだいたいここで終わるんだけど。

  • この節は3つの文でワンセットなんだし……。

    子曰學而時習之不亦説乎(子、曰く。学びて時に之を習う。また説からずや)

    有朋自遠方來不亦樂乎(友あり遠方より来る。また楽しからずや)

    そして最後のフレーズ……

  • 「人不知而不慍不亦君子乎」!
    これ、超重要なフレーズだし!!

  • 「人知らずして慍(いきどお)らず。また君子なりや」。
    これって……

  • 「人知らず」、つまり「他人に知られていないからって、不満に思うな」。あるいは……「他人に理解されないからって、プンプンするな」という意味にも読めるし。
    ま、両方の意味で構わないし。

  • つまりアレね。「自分たちのやってることが誰にも知られてなくてマイナーで、意味深すぎてポカーンとされても、まあガンバ!」って事よね。

  • まるで、マイナーなアングラ劇団の主宰者のためにあるような言葉だな。

  • そう。知られてないからって、理解されないからって、気にしない。 それが……「君子」。ジェントルメンの道ってことだし!

  • うんうん……ぜんぜん、気にしないし!全っ然、気にしないし!商業ベースに乗っからないからって、『演劇ぶっく』に掲載されなくたって、全然平気だし!
    オリは……オリは……自分が面白いと思ったパフォーマンスを、ただ追及するだけだし!

  • この「人不知而不慍不亦君子乎」に似たフレーズは、論語の中でも何回も繰り返される。
    「里仁第四」の14節には「不患莫己知求爲可知也(己を知る事なきを憂えず、知らるべきをなすを求むるなり)、つまり、「知られなかったり理解されないことを憂うんじゃなく、知られる方法を考えましょうよ」とか、

  • うっ。

  • 衛霊公第十五の19節「君子病無能焉不病人之不己知也(君子、無能を病(うれ)う、人の己の知らざるをうれえざるなり)、「ジェントルメンは自分の無能さを憂いても、自分の知られなさや理解されなさを憂わない」とか……

  • ううー!

  • 憲問第十四の32節「不患人之不己知(人の己を知らざるを憂えず)」、「知られてないからと言ってスネるな」とか、

  • めっちゃ気にしてんじゃん!
    めっちゃ知られてない事気にしてんじゃん!
    めっちゃ理解されてない事憂いてんじゃん!

  • う……憂いちゃ悪いか!気にしちゃ悪いかあっ!

  • 孔子は、その当時の知識人の間では結構その、なんというか……。
    知識人からは「こんな乱れた世の中で頑張っても意味ないよ」と笑われたり、民からは、似た顔の悪人と間違えられて脅されたり、なぜか専門外の畑の作物の育て方を聞かれたり……
    こういう感じだったから、孔子は自分自身を鼓舞するためにも、言い聞かせてたのかもしれないなあ。

  • オリは……オリは気にしないし!オリは……自分の道をつきすすむんだし!!

  • 魔界転生した孔子も、ただしの魂と共鳴し合って苦悩が続いているようです。
    現代にこんなに知られるようになっても、孔子は「こんな理解のされ方、違う!」とため息をついているのかもしれませんね……。

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