第2話

全5話

ただしが椅子の中に住んでいるようです? 第2話

人間椅子の核心に近づくし! 人間椅子や江戸川乱歩,小説を交えながらわかりやすく解説

2016/01/30

えいすけこばやし

9

人間椅子 江戸川乱歩 小説 ホビー 日本文学

  • facebook share
  • line
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • あらすじ。ゆりかは気味の悪い手紙を読み始めました!そして…!

  • すごく嫌な感じ。でもなぜか読まずにはいられない手紙。

きたー
  • ボクは、そうして、ひとつひとつ椅子を仕上げるたびごとに、言い知れぬ味気なさに襲われるんだし。その、なんとも形容のできない、イヤーな、イヤーな心は、月日がたつに従って、だんだん、ボクには堪えきれないものになってきたんだし……。

シルエット!
www
ワロタ
  • 「こんな、うじ虫のような生活をつづけて行くくらいなら、いっそのこと、死んでしまったほうがましだし!」

  • すっげーネガティブ。

  • ボクは、まじめに、そんなことを思うんだし。仕事場で、コツコツ鑿のみを使いながら、釘を打ちながら、或いは、刺戟の強い塗料をこね廻しながら、その同じことを、執拗に考えつづけるんだし。

  • 「だが、待てよ、死んでしまうくらいなら、それほどの決心ができるなら、もっとほかに、方法がないものだしか!?。たとえば……」

    そうして、ボクの考えは、だんだん恐ろしいほうへ、向いて行くんだったんだし。

  • …ごくり。

  • 丁度その頃、ボクは、かつて手がけたことのない、大きな革張りの肘掛椅子の製作を頼まれていたんだし。この椅子は、同じB市で外国人の経営しているあるホテルへ納める品で、一脚なら、その本国から取り寄せるはずのを、ボクの雇われていた商館が運動して、日本にも舶来品に劣らぬ椅子職人がいるからというので、やっと注文をとったものだったんだし。

    それだけに、ボクとしても、本当に魂をこめて、夢中になってやったものだったんだし。

  • あら、よかったじゃない。

  • さて、できあがった椅子を見ますと、ボクはかつて覚えない満足を感じたんだし。ボクは例によって、四脚ひと組みになっているその椅子のひとつを、日当たりのよい板の間へ持ち出して、ゆったりと腰をおろしたんだし。

    なんという坐り心地のよさなんだし!!

  • フックラと、硬すぎず軟かすぎぬクッションのねばりぐあい、わざと染色を嫌って、灰色の生地のまま張りつけた、なめし革の肌ざわり、適度の傾斜を保って、そっと背中を支えてくれる豊満な凭れ、デリケートな曲線を描いて、オンモリとふくれ上がった両側の肘掛け、それらのすべてが、不思議な調和を保って、渾然として「安楽」という言葉を、そのまま形に現わしているように見えたんだし。

  • かなりの椅子フェチじゃないとここまでこだわった描写できないわね…。

  • ボクは、そこへ深々と身を沈めて両手で、丸々とした肘掛を愛撫しながら、ウットリとしていたんだし。そうしたら、ボクのくせとして、止めどもない妄想が、五色の虹のように、まばゆいばかりの色彩をもって、次から次へと湧き上がってきたんだし!

  • 物書きとして、そんな椅子があったら是非ほしいわぁ…。

  • あれを幻というんだし? 心に思うままが、あんまりはっきりと、目の前に浮かんできたんだし。ボクはもしや頭が変になったんだし? って、恐ろしくなったほどなんだし。

    そうしているうちに、ボクの頭に、フとすばらしい考えが浮かんできたんだし。悪魔の囁きというのは、多分ああしたことを指すのじゃないかし? それは、夢のように荒唐無稽で、不気味な事柄でしたし。でも、その不気味さが、言いしれぬ魅力となって、ボクをそそのかすようになったんだし!

  • 椅子を納品しないで自分のものにしちゃったとか…?

  • 最初は、ただただ、ボクが懸命に作った美しい椅子を、手放したくない!できることなら、その椅子と一緒に、どこまでもついて行きたい、そんな単純な願いでしたし。それが、うつらうつらと妄想の翼をひろげているうちに、いつの間にか、日頃、ボクの頭に発酵していた、ある恐ろしい考えと結びついてしまったんだし。そして、ボクはまあなんという変人なんだしか!? その奇怪きわまる妄想を、実際にやってみようと思い立ってしまったんだし……。

ワロタ
  • ボクは大急ぎで、4つの内でいちばんよくできたと思う肘掛椅子を、バラバラにこわしてしまいましたんだし。そして、またそれを、ボクの妙な計画を実行するのに、都合のよいように造り直したんだし! それは、大型のアームチェアーだしから、掛ける部分は、床にスレスレまで革を張りつめてあるし、そのほか、凭れも肘掛けも、非常に分厚くできていて、その内部には、人間一人が隠れていても、決して外からわからないほどの、共通した大きな空洞があるんだし。

  • ふむふむ…。

  • もちろん、そこには頑丈なの枠と、沢山のスプリングが取りつけてあるんだしが、ボクはそれらに適当な細工をほどこして、人間が掛ける部分に膝を入れ、凭れの中へ首と胴とを入れ、ちょうど椅子の形に坐れば、その中に隠れていられるほどの余裕を作ったんだし!

ざわ.....
  • そういう細工は得意だしから、手際よく便利に仕上げたし! たとえば、呼吸をしたり、外部の物音を聞くために、革の一部に、そとからは少しもわからぬような間を作ったり、凭れの内部の、ちょうど頭のわきの所へ、小さな棚をつけて、何かを入れておけるようにしたり(ここへ水筒と軍隊用の堅パンとアメとかクッキーとかおせんべいを詰めたんだし!)

ふむふむ
ワロタ
  • 食べ物まで。かなり本気ね…。

  • あとは、ある目的のために大きなゴムの袋を備えつけたり、そのほかさまざまの考案をめぐらして、食糧さえあれば、その中に2日3日入っていても、決して不便を感じないようにしたんだし。いわば、その椅子が、人間一人の部屋になったんだし! 完成だし!

  • うわー。この手紙の人キモイわね……。すごい想像力……。もう続きは読みたくない、でも読まないといけない気がするわ。さらに、この文体、どこかで見た、聞いたことがあるような気がするのよね……。

  • ボクはシャツ一枚になって、底に仕掛けた出入り口の蓋をあけて、椅子の中へ、すっぽりと、もぐりこんだんだし。それは実に変な気持ちだしよ……。真っ暗な、息苦しい、まるで墓場の中へはいったような、不思議な感じなんだし。でも、考えてみれば、ある意味、墓場に違いないんだし。ボクは、椅子の中へ入ると同時に、ちょうど隠れ蓑でも着たように、この人間世界から、消滅してしまうんだしから。

  • 消滅…。

  • 間もなく、商会からの使いのものが、四脚の肘掛け椅子を受け取るために、大きな荷車を持ってやってきたんだし。ボクの内弟子が(ボクはその男と、たった二人暮らしだったんだし)何も知らないで、使いのものと対応してるんだし。車に積みこむ時、一人の人夫が「こいつはばかに重いぞ」とどなっていたからだしね、椅子の中のボクは、思わずハッ、ビクッ! としたんだしが、肘掛椅子そのものが非常に重いのだしから、別段あやしまれることもなく、やがて、ガタガタという荷車の振動が、ボクのからだに一種異様の感触を伝えていたんだし。

  • 非常に心配だったんだしが、結局何事もなく、その日の午後には、もうボクのはいった肘掛椅子は、ホテルの一室に、どっかりと据えられていたんだし。後でわかったんだしが、それは、私室ではなくて、人を待ち合わせたり、新聞を読んだり、煙草をふかしたり、いろいろの人が頻繁に出入りする、ラウンジとでもいうような部屋だったんだし。

  • …………

ふむふむ
  • さらにつづく!

Copyright © VOYAGE GROUP, Inc. All Rights Reserved.